残業女子のゆるゆるバランス自炊

毎日仕事で帰りが遅くても、手を抜きながら健康的な食生活を整えるために工夫しています

「食の安全」心配御無用!/渡辺宏

生協の仕入担当の経験から、食品の安全について書かれた本。

さまざまな食品について書かれていて、だいたいの怪しい話を網羅している印象。
添加物、自然食品、白砂糖とか化学塩とか…
巷の噂に翻弄されてあれこれ悩んでいる人がいたら、おすすめしたい一冊です。

一番印象に残ったのは無農薬野菜の話。
有機栽培=無農薬ではないよ、というのは知っていたものの、無農薬野菜=無農薬ですらないのだそうな。
自分で野菜を育ててみるとなんとなく実感できますが、一切農薬を使わずに商品作物をつくるというのはやはり難しい話なのですね。
また、「無農薬」というために農薬より危険な木酢液を使っているというのは、やはり自然信仰が根強いのだと思わされます。

遺伝子組換え作物については、厳しい基準をクリアしているので、基準のない普通の品種改良作物より安全であるという話。
なんだか忘れましたが、ほかのものでも、検出されたから危険だ!と騒がれたけど実際は検査されていない食品にも含まれていたという話があった気がします。
危険だということが知られていない=安全 というわけではないことをきちんと頭に入れておかなければならないと感じました。

無添加はかえって危ない/有路昌彦

食品安全委員会にも関わっている著者が「無添加食品」を切り口に添加物について書いた本。
リスクとベネフィットだけでなく、経済的な面からみた損失も考察されていたのが興味深かった。

食品添加物が危ないと思われる訳

食品添加物がなぜここまで目の敵にされているのか?というのが私の疑問としてずっとあるのですが、やはり昔の中毒事件が印象に残っているからとのこと。
さらに誤解を増幅する要因として、教育・メディア・学者が挙げられていました。
メディアによって「危険」は伝えられるけれど「安全」は報道されないので、ネガティブなニュースしか消費者の耳には入ってこないからだ、と本書では理由づけられていました。

これって食品に限らずどんな情報でもそうだと思います。
一消費者として、「自分の知っていることがすべてではない」ということを認識しておかないといけないな、と感じました。

リスク&ベネフィットコミュニケーション

食品添加物の勉強をするとおなじみになる、リスクについての考え方がこの本にも書かれていて
BSE感染した肉を食べて変異型クロイツフェルトヤコブ病にかかるリスクを1とすると、重篤な食中毒にかかるリスクは384倍。タバコが理由で死亡するリスクは約438万倍。
というわけで、ニュースに踊らされて騒ぎ立てていながら、肉をよく加熱しないまま「これくらい大丈夫だよね」と食べたり、タバコを吸ったりするのはどうにもおかしい。ということになります。

ちなみに入浴中の溺死は約38万倍だそうで、最近危うく溺れかけた私にとっては衝撃でした。思ったよりお風呂ってリスク高いですね…

そう考えると、やはり人々は自分のよく分からないことや耳慣れないもの(添加物やBSE)には大きすぎるほどの恐怖感を抱くけれど、馴染みのあるもの(肉、タバコ、お風呂w)にはリスクがあると感じにくくなるのだな、と改めて実感しました。

さて。
そんなリスクをどう人々に伝えていくか、ということですが、リスクを伝えるだけでは「含まれていないに越したことはない」という考えてしまうようです。
そこで、食品添加物の果たしている役割をリスクとともに伝えると、受け入れられるのだそう。

今までリスクコミュニケーションというと、リスクの考え方を分かってもらわなければ!と思っていましたが、ベネフィットもきちんと伝えることでより理解してもらえるコミュニケーションになるのだなとわかりました。

私たちは1日にどれだけの食品添加物を食べているか

これも以前質問されて答えられなかったこと。
「日本人は1日に20gも添加物を摂っている」と聞いたことがあると言われ、私はそんなの初耳だよ!と思いました。
一応食品を専門に勉強してきたつもりなのに、初耳が多くて情けないです。

添加物の摂取量についての調査は、厚生労働省によってされています。
毎年何かしらの調査(用途別に絞って)はされているのですが、最も多く(100種類)の食品添加物を調査した、平成12年の調査をみてみたいと思います。

マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査

1995年〜1997年の国民栄養調査をもとに、日本人がどの食品をどれだけ食べているかを計算し、その量の食品を市場で購入して添加物量を分析しています。
このデータを見ると、成人で1日に21057 mgの食品添加物を摂取しているそうです。
つまり、約21 g。
私に質問した方は、おそらくこのデータをもとにした記述に接したのだと思います。

ただ、ちょっと待った!

食品添加物として定量された成分の一覧の中には、食品中にもともと含まれる成分も多くあります。
たとえば、果物に含まれるクエン酸やリンゴ酸、野菜に含まれる硝酸塩などがあげられます。
ビタミン類としては
・β-カロテン(=ビタミンAとしてはたらく)
チアミン(=ビタミンB1
リボフラビン(=ビタミンB2
アスコルビン酸(=ビタミンC)
トコフェロール類(=ビタミンE
がありますし、
ミネラルではカルシウム、鉄、マグネシウムがあります。
ほかにも、テアニン(緑茶の成分)やヘスペリジン(柑橘類の成分)などは機能性成分としても知られています。

この調査では、食品に含まれる量すべてを定量しているため、
この量=添加物量ではありません。
天然に存在する成分と、食品添加物として加えられた量の総量が示されています。
しかし、どの量が食品由来でどれだけが添加物由来なのかはこのデータからは分かりません。

一般的に「添加物」というと、もともと食品には含まれていないのに添加されている物質を問題として取り上げることが多いと考えられます。
そこで、天然には存在しない物質のみの合計値を出してみることにしました。

天然だからといって必ず安全というわけではないのですが、その件については後で触れます。

この調査では、天然成分として存在しない成分をA群、天然成分としても存在する成分をB群と分けています。
A群のみの合計値(成人)を計算すると、1日の摂取量は2127.5 mg*1

初めの数値を見ると、訳の分からない成分を21 gも取っているのか!と思ってしまう人が多いのかもしれませんが、
実際は2 gなんですね。。

この2127.5 mgのうち、オルトリン酸(リン酸)が2094 mgを占めます。
その量を差し引くと、33.5 mgとなります。
いろいろ話題に出されている食品添加物を合わせても、これだけの量にしかならないのです。

とはいえ、これが実際どれぐらい安全/危険なのかは、天然・非天然にかかわらず量で把握していく必要があります。
天然物であっても摂りすぎれば害になりますのでね。

そこで、ADI*2と比較したデータ*3を見てみます。
摂取量とADIを比較すると、ADIを上回っているものはひとつしかありません。

それは、硝酸塩です。
先ほど述べたように、硝酸塩は野菜に含まれています。
報告書の本文では、添加物由来はADIの1%以下であること、野菜を洗ったり調理したりする過程で硝酸塩が流出することから、実際の摂取量はこのデータよりも少ないと推測されています。
ADIは超えてすぐ毒性が現れる量ではないし、食品に含まれる成分をADIで評価するのは違和感がありますが
やはり超えているのは好ましくないので、栽培技術の工夫等で減らすことが望ましいと思います。
(野菜の硝酸塩に関する情報は農林水産省のサイトにも掲載されています)

しかし、その他の化合物はADIを下回っています。
一般的に本やネットなどで心配されているような添加物についてみてみると、
いわゆるタール系色素なんて0.1%にも全く満たない量だし、BHT・BHA・OPPはそもそも摂取量が0mg。
安息香酸で0.3%、ソルビン酸で1.2%。
亜硝酸塩でも9.6%なので、ハム大好きで毎食山のように食べまくる!とかでない限り大丈夫かと。

こうしてみてみると、それぞれの添加物が安全な範囲内で使われていることが分かります。
ただ、安全と安心は違うので、そんな成分を体に1 μgだって入れたくない、とお思いの方は避けていただくしかないのでしょうね。
「量が少ないなら安心」と思っていただける世の中になれば良いと思うのですが…

*1:表10-4をもとに計算しました

*2:前回の記事参照

*3:表6

「1日分の野菜」=350gの根拠

コンビニで最近よく見る「1日分の野菜の1/3が摂れる」とか「1日分の緑黄色野菜が摂れる」というふれこみのお弁当を見て、
そういえばなぜ野菜の摂取量は350g、緑黄色野菜は120gなんだろう…と、ふと気になったので調べてみた。

この摂取量の出所は、健康日本21だそう。

健康日本21の栄養・食生活のところを見てみます。

栄養・食生活との関連が深いとされる疾病として、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、脳卒中、一部のがん(大腸がん、乳がん、胃がん)、糖尿病、骨粗鬆症などがあるとしています。
これらの疾病と関連のある栄養素として、
エネルギー(消費とのバランスとして)、脂肪、ナトリウム、カリウム食物繊維、抗酸化ビタミン、カルシウムなどをあげています。

つまり健康日本21では、生活習慣病予防の観点で摂取の目安を定めているというわけです。

このうち、野菜が関わるのはカリウム食物繊維、抗酸化ビタミンです。
循環器疾患やがんの予防のためにカリウム食物繊維、抗酸化ビタミンを摂取する必要があり、現状*1ではこれらの成分は野菜から多く摂取されています。適量摂取するには、野菜350〜400gの摂取が必要と推定され、350g以上という基準が定められました。

一方緑黄色野菜はというと、カルシウム摂取を目的に基準が設定されています。
カルシウムは、牛乳・乳製品、豆類、緑黄色野菜から多く摂取されています。緑黄色野菜の摂取量とカルシウムの摂取量の関係を調査し、「第6次改定日本人の栄養所要量」*2の600〜700mgを摂取するために適切な量が120gと割り出されたそうです。

緑黄色野菜=カロテンとビタミンCのイメージだったので、カルシウム摂取のために設定されていたというのは意外でした。

以上、厚生労働省のサイトを参考にかきました。

*1:1995〜1997年の国民栄養調査

*2:当時の基準

ARfDって今回が初耳だった件

改めて説明が必要ないくらい有名な事件となったアクリフーズのマラチオン混入事件ですが、事件が収束するまでの過程でこんな報道がされました。

マルハニチロ:当初より重い農薬毒性に訂正 会見で*1

半数致死量のLD50を基準にしたらそれはまずいでしょ。
というのはさておき、ARfDってなんだ?そんなの習ってないぞ*2と思ったので、1ヶ月前のネタではありますがさっくりと調べてまとめてみました。

ARfD:急性参照容量 (Acute Reference Dose)
24時間またはそれより短時間に経口摂取しても、健康に悪影響が生じないと推定される1日当たりの量

今まで食の安全について大学で習ったり、本で読んだりしてきましたが
食品添加物や農薬についてはADIを用いて考えることが多くありました。

ADI:一日摂取許容量 (Acceptable Daily Intake)
毎日一生涯摂取し続けても健康に悪影響が生じないと推定される1日あたりの量

つまり、ARfDは急性毒性、ADIは慢性毒性の指標というわけです。
今回のマラチオンのように、急性の健康被害が出るケースはADIではなくARfDを使うべきだということがわかりました。

上記を書くに当たって、厚生労働省の報道発表を参考にした*3のですが、今回のマラチオン混入濃度が15,000 ppmって…百分率にしたら1.5%。すごい濃度です。
生産側のモラルが問われるなあ、と再度実感した出来事でした。

*1:毎日新聞、2013. 12. 31

*2:以前読んだ本に載っていたようですが、すっかり失念していました

*3:別添2に載っていた用語説明が他のサイトより分かりやすくて、お役所の発表する資料のイメージを良い意味で裏切られました

半熟卵と温泉卵の違い

これもいつも忘れてしまうので、まとめておきます

半熟卵

白身は凝固、黄身が半凝固(固い白身を割ると、黄身がとろっと出てくる)
作り方:ゆで卵よりもゆで時間を短く(7分ぐらい)する
加熱時間が短いため、白身にだけ熱が伝わり凝固する。

温泉卵

黄身が半熟、白身が半凝固状態(黄身の周りにぷるぷるの白身がついている)

作り方:温泉の源泉に漬ける or 65〜68℃のお湯で30分ほどゆでる
黄身は65〜70℃、白身は75〜80℃で凝固するため、低温で長時間加熱することで黄身だけが固まる。

砂糖の種類

スーパーに行くと、やたらいろいろな種類の砂糖が並んでいますが
何が違うんだっけ?と記憶がぼんやりしてしまいがちなので、ここにまとめてみます。

上白糖

いわゆるふつうの白いお砂糖
さとうきびを絞って濃縮した液から、ショ糖以外の不純物を沈殿させたり活性炭に吸着させたりして取り除く。最後に、糖の結晶と液体(糖蜜)を分けて完成。
糖の白さはショ糖そのものの色に由来する。色を抜いたり染めたりしているわけではない。

グラニュー糖

上白糖よりもショ糖の割合が高い砂糖
結晶が大きく、さらさらしている。
お菓子作りや紅茶に入れるのに向く。

三温糖

上白糖を作るときに残った糖蜜を加熱して結晶化させ、まだ結晶化していない糖を取り出したもの。
加熱した際に糖がカラメル化することで茶色くなる。未精製のため茶色くなっているわけではない。(それは次項の黒砂糖)

黒砂糖

糖の結晶と液体(糖蜜)を分けないで作った砂糖
精製度が低く、ミネラルが豊富。
(例えば、100gあたりカルシウムは240mg、鉄は4.7mg含まれている)
ただ、1日に黒砂糖を100g食べるなんて人はいないので
「たいして摂取できないから意味ない、白砂糖でいい」と考えるか、
「少しでも多くとりたいから黒砂糖を使おう」と考えるかは
個人の価値観によるかと。

甜菜糖

甜菜(ビート)からつくられた砂糖(一般的に黒砂糖が多い)
そのため、こちらにもミネラルが含まれています。
また、オリゴ糖を含むので腸に良い、血糖値を上げにくいなどとも言われている。